台湾語の音韻 |
音韻的には、台湾語は非常に発達した連続変調(tone sandhi)規則を持つ声調言語である。一音節には頭子音、母音、末子音が含まれる。
子音
子音には次のようなものがある。
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有声 |
無声/
無気 |
無声/
有気 |
鼻音 |
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s |
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歯茎硬口蓋音 |
j |
ch |
chh |
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両唇音 |
b |
p |
ph |
m |
歯音 |
l |
t |
th |
n |
軟口蓋音 |
g |
k |
kh |
ng |
|
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|
h |
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母音
母音には次のようなものがあり、方式によって表記に違いがある。
POJ(白話字) |
a |
e |
i |
o |
o· |
u |
m |
ng |
TLPA |
a |
e |
i |
o |
oo |
u |
m |
ng |
PSDB(普實台文) |
a |
e |
i |
oi |
o |
u |
m |
ng |
白話字の母音 o は非円唇後舌半狭母音で、あいまい母音(シュワー)と類似している。それとは対照的に、ơ は円唇後舌半広母音で、やや口を開いて唇をすぼめる。日本統治時代の台湾語仮名では「ヲ」、「オ」で表記されている。
加えて、二重母音や三重母音が多くある(例えばiau)。母音 mやngは鼻音で、単独で音節となりうる。それ以外の母音は鼻音ではない。非鼻音は鼻音にすることができる。例えば、aは非鼻音だが、aⁿは同じ母音の鼻音化音である。
声調
すべての音節に声調がある。声調は7つある。伝統的に1~8と数字で表され、第2声と第6声とは同じ声調を表す。例えば、音節aを声調つきで示すと次のようになる:
- a; 高平
- á; 降下
- à; 低平
- ah; 低止
- â; 上昇
- 第6声は第2声と同じ。
- ā; 中平
- a̍h; 高止
伝統的な言語分析では、声調を5段階で記述し(声調を表す番号の右の数字は、レベル5が最も高く、レベル1が最も低いことを示す)、それを中古漢語の声調と結び付けている(下記では、その中古漢語の声調名が示されている):
- 44; 陰平
- 51; 上聲
- 31; 陰去
- 3; 陰入
- 24; 陽平
- 第2声と同じ。
- 33; 陽去
- 5; 陽入
また、(一例として)参考文献にあるWi-vun Taiffalo Chiung'の現代音韻分析を参照。上記の分類に異議を唱えている。
第4声と第8声では、末子音にh、p、t、kが生じる。末子音がp、t、kの場合、その音節が鼻音になることは不可能であり、これらはそれぞれ、他の声調の鼻子音m、n、ngに対応している。siaⁿhのように、第4声や第8声での末子音がhの場合は、その音節が鼻音になることが可能である。
軽声は、動詞の行為の拡張や名詞句の終わりなどを示す際に現れる。軽声を表記する際は、前の音節とdouble dash(--)を介して表記することが多い。
台湾北部で話される方言では、第4声と第8声の区別がない。いずれも第4声として発音され、後述する連続変調規則も第4声の規則が適用される。
音節構造
音節は、子音の間に母音(単母音 or 二重母音 or 三重母音)が必要である。全ての子音は語頭に生じうる。子音p, t, k, m, n, ng(hを含める人もいる)は音節末に生じうる。故に、ngiau("かゆみ(をかく)")やthng("スープ")などが可能である。第二の例では鼻音ngが音節主音である。
連続変調
台湾語には非常に多くの連続変調規則がある。発話の際、最後に発音される音節のみがこの規則の適用を受けない。'発話'とは何かという問題は、この言語の研究では熱いトピックである。概略的に言えば、発話は語、句、短文と考えられうる。
下記の連続変調規則の記述は伝統的な説明方法にのっとったものであり、教育上記憶しやすい配列をなしている。影響を受ける音節(つまり、発語の最後の音節以外の全て)の声調がどのように変調するかは下記の通りである。
- 元の声調が第5声ならば、第7声で発音せよ。
- 元の声調が第7声ならば、第3声で発音せよ。
- 元の声調が第3声ならば、第2声で発音せよ。
- 元の声調が第2声ならば、第1声で発音せよ。
- 元の声調が第1声ならば、第7声で発音せよ。
- 元の声調が第8声で語末子音がhでなければ(つまりp、t、kであれば)、第4声で発音せよ。
- 元の声調が第4声で語末子音がhでなければ(つまりp、t、kであれば)、第8声で発音せよ。
- 元の声調が第8声で語末子音がhであれば、第3声で発音せよ。
- 元の声調が第4声で語末子音がhであれば、第2声で発音せよ。
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